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と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて、
「それあ、あんた」
「どうですか、掛りさうかね」
「はい、若先生に代りに行つてもらへとおつしやいました」
「うん、何かア」
「それあ、さうだらうなあ。なんしろ広い海のこつた!――ねえ、君」
房一は男の前膝部をたゝいた。脚気でもない。心臓は弱つていた。単音でなく、微弱な重音があるので弁膜症の気味があるとも診られた。呼吸器に異状はなかつた。一応の診察を終ると、房一は患者の顔から、胴体にかけて、熱心に眺めた。皮膚は弛緩して、生気がなかつた。だが、その極端な貧血と一般的な衰弱とは典型的な寄生虫の症状らしいことにさつきから気づいていた。
「や、それでは――」
「居なくたつて訴訟はいくらでもできらあね」
「お粗末ではござりまするが、どうぞごゆるりと」
河原の端にある高い築堤の上で、白い割烹着かつぽうぎを着た女が、口に手をあてて何か叫んでいた。
房一が云ひかけると
「――へえ、まだお帰りぢやないのかね」